ミニ国家。

アルプスへと、分け入って走る。みるみるうちに遠くにあった山々が近づいてくる。ギザギザとした、稜線。人を拒むかのような、岩肌。
しかしそれは見ている限りにおいて、感動すら呼び覚ます美しさである。

オーストリアから、ひさしぶりのパスポートチェックを受けて入国したのは、そんな山々に抱かれた国、リヒテンシュタイン公国*1

首都のファドゥーツは、人口たったの5千人。
首都を主張しているのは、町を見下ろす高台、というより岩壁にはりついたような公爵の居城くらいだろうか。

ファドゥーツのモダンな建物たち。

一人のリヒテンシュタイン人が話しかけてくる。どっからきて、何ヶ月かかって、何キロ走ったか。そんないつものやりとりをして別れると、彼はすぐ近くにいた工事作業員に話しかけ、「おい、あの日本人がうんたらかんたら・・・・」と話し始める。
よくある田舎町の風景。とてもここが首都とは思えないほど、こじんまりとしている。

そして宿にて。
夕食はどうするんだと尋ねられ、自分で調理すると答えたら、
「ならばここで私たちと食べればいいじゃない!今日はディナーのお客さんがいるから豪華よ!」
と言ってスタッフルームへと招いてくれた。
予想もしていなかった、リヒテンシュタインのホスピタリティ。
感謝、感謝である。


写真上:ドイツ入国後より町の入り口にある看板。町の教会の定期ミサの予定を示している。
バルツァース・リヒテンシュタイン(Balzers,Liechtenstein
総走行距離16480km

*1:ミニ国家。面積は茨城の霞ヶ浦と同程度。ヨーロッパ最後の絶対君主制と言われる。公爵家モナコ公より、イギリス王家より富裕。