ダートの峠へ。

首都ブエノスアイレスから、バスに揺られて20時間。

アルゼンチン北西部の街、サルタについた。

ようやく、自転車の旅の始まりだ。

まず目指したのは、人口2000人の小さな村、カチ。

そこまでの道も、いきなり渡渉あり、ダートありの険しい道。

標高3300mまで、一気に上る。

そしてカチの村は、標高2100m。

そこからは、国道40号を、ひたすら北上。
道はずっとダート。
めざすは南米国道最高所、アカイ峠(4895m)だ。

峠までの102km、渡渉にコルゲーション(路面が洗濯板状に波打つこと)と、飽きることがない。

しかし3500mを越えたあたりから、だんだんと高山病っぽくなってくる。頭痛、だるさがあって、自転車をこぐことができない。

結局、峠の手前20kmほどは、ほとんど押した。2日でいけると思った道も、3日かかった。

だがそれだけに、峠についたときの喜びはひとしおだった。

その日初めて出会った車は、峠のうえで。午後二時に、初めて人と会う。

だれかと喜びを分かちあえる幸せを感じる。また、いろんな人に助けられている。

高山病もその喜びで吹き飛んだような気がして、さらに高度を下げることで本格的に回復する。

追い風にあおられて、夕暮れ時の山あいの小さな町に到着した。

サン=アントニオ=デ=ロス=コブレス・アルゼンチン(San Antonio de los Cobres, Argentina)
総走行距離336km