アイスランド上陸!!〜2日目〜

 交通ルールの世界標準は、右側通行である。しかし、イギリスと、その影響下にあった国々は、左側通行を採用している。
 そもそも通行帯の左右を決める必要が出てきたのは、ヨーロッパにおいて経済が発展し、モノや人の往来が盛んになってきたころであった。その時は各国で独自に慣習化していたのだが、これを統一したのが19世紀初頭のナポレオンである。
彼はヨーロッパ全域での交通をスムーズにするため、車両の通行を右側に定めた。
 右側になった理由は、馬車の御者が鞭をふるう際に、対向車の御者の鞭と接触しないため、と一説に言われる。
だが、反ナポレオン、反大陸のイングランドはナポレオンに対抗し、逆の左側通行で国内、植民地を統一した。


その気まぐれによって、僕は日本と同じ左側を走っている。
深夜二時、ロンドン郊外も大ロンドン(25km圏)を越えると家はまばらで、街灯もなくなる。
たまの大型トラックが轟音で抜き去ってゆく以外は静寂が支配する夜空。満月が煌々と浮かんでいる。気温はぐんぐん下がり、12度ちょっと。

時間をつぶしながらも、3時半過ぎにはガトウィック Gatwick 空港についてしまった。24時間開いているこの空港は、比較的近距離路線が犇めき合うロンドン第二の空港である。滑走路が1本しかないため、常に飛行機で混み合っている。

眠い目をこすりながら、とりあえずチェックインを済ませ、自転車はoutsize-bagageとして預ける。outsize-bagageを担当している空港職員に
「お前は日本人か?」
と聞かれ、そうだと答えると
「俺は数年前に日本で空手を習ってたんだ。***流だ、知ってるか?」
とのこと。残念ながら流派はわからなかった。そしてまた日本に行きたいと言っていた。

 イギリスのセキュリティーチェックは厳しい。靴まで脱がされて金属探知機を通る。


 その先は巨大な待合ターミナル。ヨーロッパ各国、中近東、北米方面の目的地が電光掲示板に並んでいる。そしてターミナルには様々な顔の人、人、人。
僕は眠い目をこすりながら、かすかに朝焼けに染まる空と滑走路を見下ろす椅子に横になり、ウトウトしてしまった。

出発は8時過ぎになった。双発の小さなジェット機。いよいよアイスランドに上陸できるのかと思うと、いやがおうにも眠れなくなる。


3時間のフライト。時差はアイスランドサマータイムを採用していないため、夏の間だけ1時間。


飛行機から見る、初めてのアイスランド。荒涼とした大地があった。

ケフラヴィーク keflavík 空港はシンプルで、とても清潔なイメージだった。パスポートコントロールを通過し、odd-bagageとして出てきた自転車を受け取り、外へ出るとわずかに雨が降っていた。そして、尋常じゃなく寒く感じる。

とりあえず着れるものを着込み、自転車を組み立てる。

両替は、日本円から。100円が50ISK(アイスランドクローナ)にしかならない。
空港内のコンビニでサンドイッチを買うも、1パックで500円近くする。

まだ正午にもなっていない。ブルーラグーンで温泉でもつかろうかと考えていたが、しかし風があまりにも強い。そして雨は降ったりやんだりを繰り返している。そこで、とりあえず必要な食料等を買出し、空港のあるこの町のキャンプ場で明日以降に備えることにした。よく考えると、ロクに寝ていなかったんだ。

3時前に、キャンプ場にチェックイン。日本も走ったことのあるというオランダ人サイクリストとの会話を楽しみ、シャワーの温水の硫黄臭さにびっくりし、いつの間にかぐっすり寝てしまっていた。

                前日と併せて 60km