もはや夏どころではない、トルファン。

手元の温度計は、48.3℃を指していた。

直射日光の下で、自転車に乗りながらなので、もちろん確かな数字ではない。
だが、むせるように暑い。体に感じる風は、むわっと生暖かい。


谷を下り、ついた場所は、吐峪沟。ウイグル族が昔ながらの生活を営む場所であり、一帯は文化景区に指定されている。

日中の暑さが途方もないこの地方では、住居は半地下になっている。地表より冷たい地下からの冷気を昼間に受けられるからだ。窓はできるだけ小さくする。日光が入るとすぐに暑くなってしまうからだ。そして、庭にはベッドが置かれている。夜になると、天山山脈から吹いてくる涼しい風で涼みながら眠るのだそうだ。

トルファン市街からまだ遠いためか、観光客はほとんどおらず、静かな時間が流れていた。


吐峪沟の別名は、火焔山大渓谷。
村を離れると、右手には火焔山が広がる。

玄奘の行く手を阻んだのも、この暑さだったのだ。今でこそ舗装道路が通り、交通は多い道だが、当時、砂漠を越え、荒野を越えたあとでのこの暑さは絶望的だったのかも知れない。

トルファンは、水の豊かなオアシス都市であるが、その水源の40%はカレーズ(イランのカナートと同じ)だという。天山山脈からの地下水を、街まで引く大掛かりな土木工事。それを1000年以上前から行ってきたのである。


近郊には、玄奘も滞在した高昌古城、車師前国の遺跡の交河古城、ミイラの眠るアスタナ古墳群、ベゼクリク石窟洞があり、その豊かな観光資源のおかげで、今では観光都市へと変貌した。
それでも、中心部から一歩入ると、ウイグル人が水路で洗濯をしたり、子供が水浴びをしていたり。現地の生活は、そのままの姿で残っているようであった。

絞りたてのスイカのジュースが、喉の渇きを癒してくれた。

新疆ウイグル自治区 吐魯蕃(トルファン)市(ウイグル名:トゥルパン)  総走行距離 4426キロ