シルクロード

ボスポラスの風。

イスタンブールへ入る前日、マルマラ海の入江沿いでキャンプした。 そして翌日、アジア大陸の最終日を走り切る。 最後の70キロ、休まずに走り、ボスポラス海峡へと至った。 対岸には、イスタンブールの有名なモスクが聳え立つ旧市街。 アジア側のこっち、カ…

アナトリア横断。

アジア最後の、2000m級の峠。 その峠にたどり着くまでの3日間、連日雨が降ったり止んだり。 そして、峠に差し掛かろうとする時、雨は一段と強く打ち付けてくる。 ヘルメットから滴る水滴。吐く息はさらに白い。 右手でギヤをまた軽くして、踏み込む。…

秋は深まる。

残念ながら、トルコ入国後すぐに顕れるはずのアララトの雄姿は雲に阻まれ、よく見れなかった。 木々が色づく中、キャンプ。 朝起きたら、手元の温度計はマイナス2度の表示。テントの表面には霜が噴き、朝陽に煌めく。 秋が収穫の季節なのは、どこでも同じ。 …

大統領選挙前日。

イランとナヒチェバンの国境付近に、その教会はある。 聖バルテロメウによって開かれたという、聖ステファノ教会。 イスラム国家の領内にあって、細々とながらもその文化が守られている。守っている 人たちがいる。 ちなみに、イランの国内にはキリスト教徒…

もてなしをうける。

ビザ待ちの1週間のうち、結局4回も夕食に招いてもらった。 ムハンマド一家。お母さんの作る料理が、とてもおいしかった。 近くの観光名所、「イランのカッパドキア」ことキャンドバンを訪れたりも。 自転車屋も充実してて、修理も万全。 左:ザカート(喜捨)の…

高原へ。

アゼルバイジャンは、ずっと雨だった。 それが、国境を越える間際から、どんどん晴れてくる。 小さな川を挟んだだけの国境なのに。 これがイランのホスピタリティなんだろうか。 海抜0m以下のカスピ海沿岸から、一気に内陸の高原へと入る。 交通量の比較的多…

ヨーロッパへ近づく。

アクタウの街に別れを告げ、油井の浮かぶカスピ海を渡った。 石油バブルに沸くバクーの街は、今までの街と雰囲気が一気に変わった。 城壁に囲まれた旧市街を中心に、20世紀初頭の欧風建築群、そして郊外には建設中の高層マンションが建ち並ぶ。 そして近郊に…

地平線。

川もない。オアシスもない。広大なステップが広がるウスチウルト台地は、砂漠よりも平坦な場所だった。 ただ、一直線に貫かれた道路と、並行して敷かれた鉄路。 そこで僕は初めて、地平線と言うものを知った。見渡す限り平坦なこの場所で、たとえどんなに目…

スピードアップ。

砂漠の中、ずっと平坦な道。そして、まっすぐな道。いままでの山道と違い、地図上での一日の移動が目に見えて速くなる。 一日100キロ以上の走行も苦でなくなる。 もう9月に入り、砂漠はそれほど過酷でない。気温が35度を超えることは稀になり、夜は1…

落ち着く街並み。

サーマーン朝の時代から、中央アジアの中心都市であり続けたブハラ。 その旧市街は往時の様を保っており、サマルカンドに次ぐ観光都市となっている。 夕暮れ時のモスクとマドラサが、その土壁の色と相まってとても美しかった。 ブハラより西は、キジルクム砂…

今後の予定 〜旅の中間地点より〜

ここサマルカンドから東京までの距離と、ユーラシア大陸の西端であるポルトガルのロカ岬までの距離はほぼ同じである。 ここはちょうど旅の中間地点。これから日がどんどん短くなるので、一日の走行距離は短くなるだろう。 サマルカンドから、ブハラ、ヒヴァ…

サマルカンド・ブルー

2750年の歴史を持つという、”青の都”サマルカンド。人口30万を数える観光都市は、各国から旅行者が引きもきらず訪れる。ティムール朝以降の巨大なマドラサの並ぶ、レギスタン広場。 その巨大さに息を飲む、ビビ・ハニムモスク。 いくつかの廟が列をな…

パミールから一転、首都の空気を味わう。

ほんの十年ちょっと前まで内戦が続いていた首都、ドゥシャンベ。 だが今は、その過去を物語るものは、もう容易には見つけられない。 パミール地方ことゴルノバダフシャーン自治州の州都、ハローグから首都へと至る道は、まったくもって道路維持がなされてい…

ワハン渓谷を抜けて。

タジキスタンとアフガニスタンとの国境になっている、パンジ川。 それに沿って、ワハン渓谷にはタジク、アフガンの両側に村が連なっている。 道中、町までの80キロの道のりを、家族9人のために買い出しに出る少年に会った。 自転車でアップダウンの激しい道…

旅の最高地点。

オシュの標高は、1000m以下だ。そこからタジキスタンとの国境、キジルアルト峠(4282m)まで220キロの間に一気に標高を上げる。 まずは、パミール高原の足元、チョン・アライ地方にあるサリ・タシュ村まで、180キロ。 3615mの峠は、最後の最後で一気に高度を上…

ペダリング再開。

3週間のビザ収集兼休息を終え、キルギス第二の都市、オシュへ。だがこの道が、鈍った体には辛かった。3000m級の峠が、二つ。 一つめは、ひいこら言いながらひたすら押した。急坂を20キロほど、ずっと。6時間、試練の時であった。 二つめは、それほどきつくな…

一時の休息。

この先必要になるビザを、すべてここキルギスで集める。 ここですべて取ってしまえば、もうあとは進むのみ。 しかも入国日、出国日の期限つき。 もう、あとには戻れない。進むしかない。 ビザなしで入国できるグルジアまでの道のりは、約4000キロ。 イシ…

草原の国から、山岳の国へ。

中国の出国ゲートを抜け、2キロ弱の緩衝地帯を輸送されて辿り着いたカザフスタンは、とても貧弱に見えた。 中国に比べ小さな税関、そして、質の悪い舗装。 ただ、人家はどこか欧州風。中国の土壁の長方形でなく、白いトタン屋根が葺いてある。人々は、中国…

さよなら中国。

ウルムチから約700キロ。 カザフとの国境、コルガスである。 いままでは、天山山脈の北麓をずっと走ってきた。 昨日は、天山山脈の峠へと上った。 そこは、カザフ族の住む、サイラム湖畔。 カザフ族が羊を解体し、子供が湖畔で遊ぶ。 今日は、その峠を下る。…

現在の中央アジアへの玄関口、ウルムチ。

新疆ウイグル自治区の首府、ウルムチ。 人口200万を擁する、大都市である。 街中には、ロシア語が併記された看板が目立つ。 西部大開発の号令に伴って、新疆への漢人の入植が進められた。自治区全体では、もはやウイグル人の人口を上回っているという。 …

もはや夏どころではない、トルファン。

手元の温度計は、48.3℃を指していた。 直射日光の下で、自転車に乗りながらなので、もちろん確かな数字ではない。 だが、むせるように暑い。体に感じる風は、むわっと生暖かい。 谷を下り、ついた場所は、吐峪沟。ウイグル族が昔ながらの生活を営む場所であ…

新疆の中心へ。

ハミから310キロあまり。ウルムチまでは、街が続いている。 オアシスに、入った。 なにもない、トラック運転手のドライブインが数軒の村。夕陽が格段に美しかった。 翌日、強風が、荒れに荒れた。 つい食べてしまったカップラーメンがあたり、吐いた。街に辿…

荒野に佇む王国、ハミ

敦煌から400余キロ、ここは新疆の地。 1800メートルの峠を越え、90キロ、130キロの無補給区間を抜けた。 地図にあっても、実在しない町もいくつかあった。 するとそこは、ブドウ、瓜の畑の広がる緑豊かな地であった。ハミを通る国道312号は、シルクロードを…

敦煌、そして嘉峪関。

敦煌には、中国三大石窟のひとつ、莫高窟がある。 かつて沙州と呼ばれたことからもわかるように、街の周囲は荒野、そして砂漠である。 ここでは嘉峪関へ。 万里の長城の終点を見た。渓谷で終わるその地は、ただ風が吹き荒れる荒地であった。 敦煌には、かつ…

青蔵高原を越えて。

ほとんど情報がなく、チベットほどメジャーではない青蔵高原の青海省西北部。 その幕切れは、あっけなかった。 未開放地区*1。大柴旦は、そうだった。 デリンハもそうだったのだが、そこでは何の問題もなかった。 しかし、今回は宿が少なく、そしてどの宿も…

ツァイダム盆地より。

標識には、ラサの文字が見える。 何もない荒野。天候が荒れると、ひどいことになる。 風速30m/sはあろうかという、砂嵐。6時間で、40キロも進めなかった。 ぽつんと立つドライブインで休憩し、中国人と筆談を始める。 白酒をすすりながら読めない字を…

青海湖を越えて。

西寧から約100キロ。 かつて吐蕃(チベット)に嫁いだ唐の文成公主が、故郷を懐かしみ、振り返ったという日月峠。 ここが唐と吐蕃の境界だったのである。 標高は3500m弱。日亭、月亭の二つの建築が、道を挟んで建つ以外、草原が広がっている。 チベッ…

チベット寺院へ。

今日は休養日。西寧からバスで30分。チベット仏教ゲルグ派(黄帽派)の開祖、ツォンカパの生誕地、煌中にあるタール寺に行ってきた。 境内では、五体投地で礼拝するチベット人の姿も見られた。 また、モンゴル人もチベット仏教を信仰しており、きらびやか…

チベットの香り。青海省より。

蘭州から220キロ。標高2200mの州都、西寧。蘭州郊外で初めて黄河を渡り、この大河とも別れを告げる。 昨夜は、民和回族土族自治県に泊まった。宿は清真の文字。アラビア文字も併記される。 おじいちゃんは回族の白い帽子を被り、12歳という男の子…

春を追いかけて。蘭州

天水から3日間。甘粛省の州都へ。 2290mの峠を越え、ここは1550m。黄河沿いの盆地に、街が東西にのびて形成されている。 蘭州は、回族の人たちがとても多く、彼らの作る清真料理(ハラールを守って作られた料理)である牛肉面(通称蘭州ラーメン…