青蔵高原を越えて。

ほとんど情報がなく、チベットほどメジャーではない青蔵高原の青海省西北部。
その幕切れは、あっけなかった。


未開放地区*1。大柴旦は、そうだった。


デリンハもそうだったのだが、そこでは何の問題もなかった。
しかし、今回は宿が少なく、そしてどの宿も日本人とわかると泊めてくれない。


しかたなく、外国人が泊まってよい街一番の高級ホテルへ。


そして、公安への通報。


翌日のバスでの退去命令。



自転車を載せ、バスは文字通り飛ぶように走る。(路面がよくないため、段差の旅に跳ねるのだ。そんな中を80〜100キロで走る。)


車窓には荒涼とした大地が流れる。
一枚のガラスを隔て、僕はそれをただスクリーンを眺めるかのように目をやる。
ただ、見るだけ。五感のうちほかの四つは、そこにはない。
 
駱駝がのんびりと草を食む。
その脇を、バスは高速で駆け抜ける。


サドルの上にあるとき、僕の時間はあの駱駝たちと一緒だった。


標高3600mの峠を越え、40キロのダウンヒル。一気に1700mまで下る。


向かい風でもいい。酷寒でもいい。
猛暑でも、芯まで濡れるスコールでもいい。


僕は、感じたかった。
大地を、この自然を。



そしてバスから降りられた最初の街は、甘粛省、アクサイ・カザフ族自治県


看板には、アラブ文字が踊る。
一気に、シルクロードに戻ってきたことを実感する。

240キロも、バスは走ってしまったのだ。


敦煌までは、東北方向の道のり。
いままで西風だったのが、なぜか今日は東から吹いてきた。


甘粛省敦煌市 総走行距離 3469キロ

*1:外国人の出入りが規制されている場所。自然保護区や国境付近など、治安環境維持のために指定される。だが今回の場合は、整備される途中の街、整備されていない街を見せたくないだけ。漢人にとって、未踏破の自然など見られては恥ずかしいものなのだ。すべて整備し、(漢人が)満足できるアトラクションができあがって初めて外国人を呼べるようになる。