アルプス越え・その1。

小さな国、リヒテンシュタインから、ライン川を挟んで、スイスへ。
ここには、国境らしいものは何もない。
橋の半ばに、向かいの町の紋章があるくらい。

ライン川に沿って走り、グラウビュンデン州の州都、クールへ。

山に囲まれた町から、アルプス越えは始まる。


雪の降る中、スパイクタイヤに履き替えて、はじめの峠へ。
1549m。特に名前はない。峠自体は緩やかな高地の上に位置しているが、それまでの道は険しい。11%を越える坂道。
  
そして、860mまで下る。

雪で寒いとは言え、峠道を登ると汗をかき、特に手にかいた汗が下りで一気に冷えて指先が果てしなく冷たい。
コーヒーであったまりながら、今回のアルプス越えの最高所、ユリア峠(2284m)に向かって登り始める。
この日は、1200mの町で休む。
   


翌日、雲ひとつない快晴。
   
峠までの26kmを、5時間かかって登った。
標高2000m近くから、道路は圧雪でガタガタ。
九十九折を繰り返して、ついにユリア峠へ。気温は−2度。予想していたより、ずっと暖かい。
    
そこからは、下り、下り。
凍った湖の上で、クロスカントリースキーを楽しむ人たちを横目に、一気に2000m近く下る。

イタリアとの国境をくぐり、一回目アルプス縦断を終えた。
 


山峡の町から、さらに南へ。
 
コモ湖のほとりに、わずかな隙間を這う道を走り、山肌に張り付く村を抜け、面白い形のフェリーに乗って、自転車教会マドンナ・デル・ギザッロを目指す。
    
教会は、標高750m、湖面から550mも上ったところにある。
ユリア峠よりも急峻な、14%。
  
自分を鼓舞しながら、自転車レースの名残に励まされながら、登る。
  

そして峠の頂上に鎮座し、コモ湖を見下ろすマドンナ・デル・ギザッロ。
  
自転車レースの博物館も併設され、伝説の選手たちの自転車が飾られている。
  
教会の内部も、奉納された有名選手の自転車、レーサージャージで埋め尽くされている。
今回の旅の安全、日本の自転車仲間の活躍、そして世界を駆けるサイクリストたちの無事を祈願する。
 

雪が降り出し、急いで下り始める。下るにつれ、みぞれっぽくなる。
コモの町は、もうすぐそこ。
もういちど、湖畔へと戻ってきた。


コモ・イタリア(Como,Italy)
総走行距離16727km