アトラスを越える。

世界の西の果てで地球を支えるという役目を負わされている、アトラス。
そのギリシャ神話の神の名を負い、北西アフリカにまたがるアトラス山脈が、この旅のひとつの目的であった。

極東から、西の果てへ。その旅の終わりを象徴する、山々。

そしてその山を越えるからには、できるだけ険しい道で、国道よりは県道、県道よりは林道で越えたい。
イミルシル。
秋に縁結びのムッセムというお見合いの祭りが行われ、観光客を集める以外はただ静かな村。
このアトラス山中にある標高2100mの村を経由して、南部モロッコへと山越えをすることにした。

その村への道までアクセスする国道でも、標高は2000mを越える。
オート(高)・アトラスの前に立ちはだかる、モワイヤン(中)・アトラスである。
     

そしてイミルシルへと向かう道。そのうちのひとつの林道へと、アタックする。川を渡ること数回、標高を上げ、ひとつの峠も越えて道はさらに険しくなる。大きな石がごろごろする未舗装路。急勾配。まだまだ山へと分け入る。


だが、先を行ったスペイン人、モロッコ人の4WDが引き返してくる。
雪が多くて道が閉鎖されているという。
麓では通行可能と言われたのに、しょうがない。
引き返すしかなかった。
その日は工事現場の保守小屋の隣でテントを張らせてもらう。
暗くなり、雪がひゅうひゅうと降り出した。

麓の村まで引き返した上、もうひとつのアタックルートを取るため、また林道を行く。さらに険しい道。幾度とない渡渉。

そして、県道レベルの舗装路へと出た。
そこで、翌日のアタックへと備え、キャンプ。

県道といっても、近年舗装されたばかりで、渡渉も一箇所あった。それもかなり深い。
サンダルに履き替えずには渡れぬ道。それでも県道。
快晴の中、アトラス山脈へと上ってゆく。

およそ1000mUP、6時間の末にイミルシル到着。
ムッセムに備えて宿とみやげ物屋だけは豊富だ。
だが、この時期は閑散とした印象を与えた。
   

イミルシルからは、2706mの峠を経て、あとは下るだけだ。

道中、観光客を集める渓谷美で有名なトドラ渓谷があるが、それまでの道のりも十分に美しかった。
   
こうして、アトラス行を終えた。
あとは舗装路を、カサブランカまでつなぐだけだ。
 
ティネリール・モロッコ(Tinegrir,Morocco)

総走行距離18591km